ルール改正(2)2018-2019シーズンにおけるジャンプ基礎点,GOE 採点のガイドライン(プラス面とエラー)2017-18との比較5/25現在(正式和訳等追記あり)

ルール改正(2)2018-2019シーズンにおけるジャンプ基礎点,GOE 採点のガイドライン(プラス面とエラー)2017-18との比較5/25現在(正式和訳等追記あり)

国際スケート連盟コミュニケーション第2168 号 シングルおよびペア・スケーティング 2018-2019シーズンにおける価値尺度(SOV),難度レベル(LOD),GOE 採点のガイドライン

ここではこれまでの2017-2018シーズンとどう変わったのか以下の3つの点からシングル中心に抜粋して見ていきます。さらにジャンプとステップ、コレオsqについてはGOEの値を加えたものを2017-18シーズンと比較してみた。

 

1.ジャンプ基礎点の変更

基礎点に変更があったジャンプと2A以上のジャンプのみ掲載(例えばシングルジャンプは変更なし、ダブルジャンプもLz等は変更ないので記載していません)

ジャンプ2017-2018
シーズン
2018-2019
シーズン
改正案
変更の差異
( )内は変化率
2Lo1.81.7-0.1
2F1.91.8-0.1
2A3.33.3なし
3T4.34.2-0.1
3S4.44.3-0.1
3Lo5.14.9-0.2
3F5.35.3なし
3Lz6.05.9-0.1
3A8.58.0-0.5(△5.88%)
4T10.39.5-0.8(△7.77%)
4S10.59.7-0.8(△7.62%)
4Lo12.010.5-1.5(△12.5%)
4F12.311.0-1.3(△10.57%)
4Lz13.611.5-2.1(△15.44%)
4A15.012.5-2.5(△16.67%)

 

2.ジャンプ、スピン、ステップ、コレオsq GOE採点(プラス面)のガイドライン

GOE採点
2017-2018シーズン
ガイドライン
2018-2019シーズン
改正案
GOE の等級
に対する
項目の数
+ 1 : 2 項目
+ 2 : 4 項目
+ 3 : 6 項目またはそれ以上
+1:1項目
+2:2項目
+3:3項目
+4:4項目
+5:5項目またはそれ以上
ただし+4と+5は最初の3つ(太文字で強調されている)をすべて満たす必要がある
ジャンプ
要素
1) 予想外の / 独創的な / 難しい入り
2) 明確ではっきりとしたステップ/フリー・スケーティング動作から直ちにジャンプに入
る.(SP におけるステップ/動作から直ちに行うジャンプでは独創的な,興味深い,オ
リジナリティがあるもの)
3) 空中での姿勢変形 / ディレイド回転のジャンプ
4) 高さおよび距離が十分
5) (四肢を)十分に伸ばした着氷姿勢 / 独創的な出方
6) 入りから出までの流れが十分(ジャンプ・コンビネーション/シークェンスを含む)
7) 開始から終了まで無駄な力が全く無い
8) 音楽構造に要素が合っている
1)高さと幅が十分(コンボまたはシークエンスを含む全てのジャンプ)
2) 踏切と着氷(の流れ)が良い
3)全体を通して エフォートレス(ジャンプ・コンビネーションのリズムを含む)

4) ジャンプ前のステップが予想外または独創的な入り
5) 踏切から着氷まで非常に良いボディポジション
6) 要素が音楽に合っている
スピン1) スピン中の回転速度あるいは回転速度の増加が十分
2) すばやくスピンの軸をとることができる
3) 全ての姿勢でのバランスのとれた回転数
4) 規定回転数を明らかに超えた回転
5) 良い,力強い姿勢(フライング・スピンの場合には高さ,空中/着氷姿勢を含む)
6) 独創的でオリジナリティがある
7) 全局面でのコントロールが十分
8) 音楽構造に要素が合っている
1)回転速度およびスピン中の加速が十分である
2)十分にコントロールされ、明確なポジションである(フライング・スピンの時の高さと空中/着氷姿勢)
3)全体を通してエフォートレスである

4)スピンの中心(の軸)を維持する
5)独創的でオリジナリティがある
6)要素が音楽に合っている
ステップ
シークェンス
1) エネルギーが十分で焦点の定まった演技
2) シークェンス中のスピード,またはスピードの加速が十分
3) シークェンス中に様々なステップを用いている
4) 深いはっきりとしたエッジ(全てのターンの入りと出を含む)
5) 全身が関わり十分にコントロールされた正確なステップを維持
6) 独創的でオリジナリティがある
7) 開始から終了まで無駄な力が全く無い
8) 要素が音楽構造を高めている
1)深いエッジ、明確なステップとターン
2)要素が音楽に合っている
3)エネルギーと流れが十分で上手く実行され、全体を通してエフォートレスである

4)独創的でオリジナリティがある
5)素晴らしくコミットメントされ、全身がコントロールされている
6)十分な加速と減速
コレオ
グラフィック
シークェンス
1) 流れがよく,エネルギーが十分で焦点の定まった演技
2) シークェンス中のスピード,またはスピードの加速が十分
3) 十分に明確で正確
4) 全身が関わり十分にコントロールされている
5) 独創的でオリジナリティがある
6) 無駄な力が全くない
7) プログラムのコンセプト/特徴を反映している
8) 要素が音楽構造を高めている
1)独創的でオリジナリティがある
2)要素が音楽と合っている
3) エネルギーと流れが十分で上手く実行され、全体を通してエフォートレスである

4)十分なリンクカバレッジがある
5)十分に明確で精密である
6)素晴らしくコミットメントされ、全身がコントロールされている

 

3.SP,FSでのエラーに対するGOE確定のためのガイドライン 

ジャンプ要素2017-18
GOE
2018-19
GOE
SP: 要件を満たさないジャンプ要素の最終の GOE は必ず-3--5
SP: ジャンプの前に要求されているステップ/動作が無い-3
なし
SP: ステップ/動作から直ちにジャンプしない,ジャンプ前のステップ/動作が 1 つのみ-1 ~-2
なし
転倒-3-5
1 ジャンプの着氷が両足-3-3~-4
1 ジャンプの着氷でのステップ・アウト-2~-3-3~-4
ジャンプの間に 2 つのスリー・ターン(ジャンプ・コンビネーション)-2-2~-3
F/Lz での踏み切りエッジ違反 (記号 “e”)-2~-3-3~-4
F/Lz での不明確な踏み切りエッジ (記号 “ ! ”)-1~-2-1~-3
F/Lz での不明確な踏み切りエッジ (記号無し) --1-1
ダウングレード判定 (Downgraded)(記号 << -2~-3-3~-4
回転不足判定 (Under-rotated)(記号 < )-1~-2-2~-3
回転が足りない (記号無し)
(ジャンプ・コンビネーションにおけるハーフ・ループの回転が足りない場合を含む)
-1-1~-2
スピード,高さ,距離,空中姿勢が拙劣-1~-2-1~-3
1 ジャンプで両手がタッチ・ダウン-2-2~-3
片手またはフリー・フットがタッチ・ダウン-1-1~-2
ジャンプ間で流れが無い/方向を失う/リズムが無くなる(コンビネーション/シークェンス)-1~-2-2~-3
拙い着氷 (悪い姿勢/間違ったエッジ/引っかき等)-1~-2-1~-3
拙劣な踏み切り-1~-2-2~-3
長い構え-1~-2-2~-3

 

ルール改正(案)後のGOE価値尺度と2017-18シーズンとの比較

(1)ジャンプ

改正案では全てのジャンプがGOEの値(-5~+5)によって、基礎点-50%から+50%の各係数が掛けられる

例えば4TのGOEが+2なら基礎点(9.5)+(基礎点9.5×20%)=11.4点

 -5-4-3-2-1BASE+1+2+3+4+5
-50%-40%-30%-20%-10%+10%+20%+30%+40%+50%
3A4.004.205.606.407.208.008.809.6010.4011.2012.00
4T4.755.706.657.608.559.5010.4511.4012.3513.3014.25
4S4.855.826.797.768.739.7010.6711.6412.6113.5814.55
4Lo5.256.307.358.409.4510.5011.5512.6013.6514.7015.75
4F5.506.607.708.809.9011.0012.1013.2014.3015.4016.50
4Lz5.756.908.059.2010.3511.5012.6513.8014.9516.1017.25
4A6.257.508.7510.0011.2512.5013.7515.0016.2517.5018.75

 

【比較 2017-18シーズン】

ジャンプはこれまで難易度ごとにGOE係数が決められており、例えば+の場合は3A~4LzまではGOEの値の100%、4Aは120%。-は4回転は-1、-2は120%、-3は4.0が基礎点に加減
(例えば4TGOE+2なら基礎点(10.3)+(GOE2点×100%)=12.3点
(シングルジャンプおよび1A,2T,2Sまでは一律GOEの点数に係数20%(GOE+1で0.2点、+2で0.4点、+3で0.6点)、2Lo,2Fは30%、2Aは50%、トリプルジャンプ(3T~3Lzまで)は70%)

  -3 -2 -1 BASE +1 +2 +3 
3A 5.50 6.50 7.50 8.50 9.50 10.50 11.50
4T 6.30 7.90 9.10 10.30 11.30 12.30 13.30
4S 6.50 8.10 9.30 10.50 11.50 12.50 13.50
4Lo 8.00 9.60 10.80 12.00 13.00 14.00 15.00
4F 8.30 9.90 11.10 12.30 13.30 14.30 15.30
4Lz 9.60 11.20 12.40 13.60 14.60 15.60 16.60
4A 11.00 12.60 13.80 15.00 16.20 17.40 18.60

 

(2)ステップシークェンスおよびコレオ

2018-2019シーズン(案)
改正案では全てのステップがGOEの値(-5~+5)によって基礎点に50%から+50%の各係数が掛けられる
コレオグラフィックシークェンスは基礎点が2.0から3.0に変更。GOEの値(-5~+5)に-50%から+50%の各係数が掛けられる

 -5-4-3-2-1BASE+1+2+3+4+5
-50%-40%-30%-20%-10%+10%+20%+30%+40%+50%
StSqB0.750.901.051.201.351.501.651.801.952.102.25
StSq10.901.081.261.441.621.801.982.162.342.522.70
StSq21.301.561.822.082.342.602.863.123.383.643.90
StSq31.651.982.312.642.973.303.633.964.294.624.95
StSq41.952.342.733.123.513.904.294.685.075.465.85
 
ChSq0.501.001.502.002.503.003.504.004.505.005.50

 

また、レベル4でGOE満点(+5)で得点は5.85となり、2017-18シーズンのレベル4GOE満点(+3)の6.0を下回る。今回の改正でコレオsqでGOE満点(+5)なら5.50となり、ステップsqのレベル4でGOE+4より上回ることになる。

【比較2017-18シーズン】

  -3 -2 -1 BASE +1 +2 +3
StSqB 0.6 0.90 1.20 1.50 2.00 3.00 3.50
StSq1 0.9 1.20 1.50 1.80 2.30 2.80 3.30
StSq2 1.10

1.60

2.10 2.60 3.10 3.60 4.10
StSq3 1.20 1.90 2.60 3.30 3.80 4.30 4.80
StSq4 1.80 2.50 3.20 3.90 4.60 5.20 6.00
                
ChSq 0.50 1.00 1.50 2.00 2.70 3.40 4.10

 

 

【追記】

1.国際スケート連盟コミュニケーション第 2168 号 シングルおよびペア・スケーティング
「2018-2019 シーズンにおける価値尺度(SOV),難度レベル(LOD),GOE 採点のガイドライン」の和訳が6月4日に出ました。

2.ISUからGOE判定に関する-5~+5の動画が出ました。お馴染みのISUジャッジのスーザン・リンチさん、ファビオ・ブランケッティさん解説です。

Grades of Execution +5 to -5 Single Skating

各エレメンツのGOE要素のお手本になっている選手は下記の通りです(敬省略)。残念ながらネイサンは24要素のどれのお手本にもなっていません。次回の改正の時にはぜひお手本になれるよう頑張って欲しいですね。代わりにと言っては何ですが、ラファ組の兄弟子二人(アダムとミハル)がスピンのお手本になっています。

ジャンプ

1.高さと距離

2.良い踏み切と着氷

3.開始から終了まで無駄な力がない

4.ジャンプの前のステップ、予想外または創造的な入り

5.踏切から着氷までの身体の姿勢が良い

6.要素が音楽に合っている

羽生(3A)

メドベージェア(3Lo)

フェルナンデス(4T)

羽生(3A)

コストナー(2A)

メドベージェワ(3Lo)

スピン

1.回転速度

2.よくコントロールされた、明確な姿勢

3.開始から終了まで無駄な力がない

4.回転軸を維持する

5.創造的でオリジナリティがある

6.要素が音楽に合っている

コストナー

宮原

キーガン

樋口

リッポン

ミハル

コレオ

1.創造的でオリジナリティがある

2.要素が音楽と合っている

3.エネルギー、流れ、出来映え点が十分、開始から終了まで無駄がない

4.氷面を十分依カバー

5.十分に明確で正確

6.全身の優れた関わりとコントロール

 

 

 

ミーシャ

ザギトワ

ヨリク

マッテオ

宮原

ヨリク

 

 

 

ステップ

1.エッジが深く、明確なステップとターン

2.要素が音楽と合っている

3.エネルギー、流れ、出来映え点が十分、開始から終了まで無駄がない

4.創造的でオリジナリティがある

5.十分に明確で正確

6.全身の優れた関わりとコントロール

 

パトリック

ユーロ女子(名前を誰か教えてください)

パトリック

ケイトリン・オズモンド

コリャダ

ミーシャ

 

3.1Lo(シングル・ループ)ジャンプと3連続ジャンプのハーフループ(これまでは1Loと記述)を区別するためにEu(Euler:オイラー)の表記を新たに加えました。基礎点、GOEはいずれも1Loと同じです。