2018GPシリーズ開幕。スケートアメリカ2018現地観戦レポート(1)

ネイサン、18年ぶりアメリカ男子スケ―トアメリカ2連覇の偉業達成

 

平昌オリンピック後の本格的なスタートを告げるグランプリシリーズ第一戦「スケートアメリカ」が10月19日~21日、シアトル郊外エバレットの「Angel Of The Winds Arena」で開催された。

オリンピック後で大きなルール改正が行われた最初のGPシリーズ。特にルール改正の影響が大きい男子はどういう戦略で戦うか、ジャッジからどういう評価を受けるかが焦点の一つであった。

そんな中、ネイサンはジャパン・オープンの不調からしっかり立て直し、2000―2001年のティモシー・ゲーブル以来のアメリカ男子2連覇の偉業を達成。SP、フリー共に1位の完全優勝となり、米国のスケートファンは大満足の大会となった。

振り返れば同じシアトルで行われた2012年のスケートアメリカでは日本男子(小塚、羽生、町田)が表彰台を独占。2005年の髙橋大輔の優勝以来昨年までの12年間で日本男子が10回の優勝。このことは連盟主催の朝食会でも司会が話題にするなど、米国にとっては非常に由々しき事態であり、ネイサンの連覇が手放しで賞賛されたのがわかる。

今回のLabでは現地観戦のレポートを(1)ネイサンショートプログラム(2)ネイサンフリープログラム、(3)スケートアメリカ全体総評と3回に分けてお届けする。

最小限のミスに抑え、素晴らしく遊び心のある演技を見せたSP

ネイサンは男子SP第2グループ4番滑走(全体で10番滑走)で登場。ショートプログラムはファンファーレ・チョカルリアの「キャラバン」。ネイサンによると少し東欧のひねりを加えた感じの面白い曲調に仕上がっており振付は昨季のネメシスと同じシェイ=リーン・ボーン。

冒頭の肩の動きから既にキャラバンの世界観に引き込まれる。ボディバランスが抜群で素晴らしい動きで観客を引き付ける。最初のジャンプは3アクセル。カーニバル・オン・アイスではホップしてしまったジャンプで6分間練習でも最も入念に確認していた。3Aはネイサン本人の苦手意識もあって、昨季までは観る方も祈るように見ていたが、今季は上半身の無理な力が抜けてとてもリラックスしており、練習から非常に安定していて不安がなくなった。フランスの4番ジャッジはGOE+5。3番のイスラエルのジャッジ以外全てのジャッジから3点以上のGOEを引き出し、10.97点(8.0+GOE2.97)。着氷後の左手で頭を撫でる振付もクールだ。続いて4フリップのコンビネーション。ここは少しスピードがなく慎重に入ってきてしまいステップアウトとなりコンビネーションにはできなかった。ネイサンには珍しく回転不足(UR)に初めてのエッジエラー(!)までついて5.18点(8.25+GOE-3.07)。

続いて足換えのキャメルスピン(CCSp3 2.80+GOE0.60)。最後のジャンプは予定では3ルッツだが、4フリップで十分な得点を得られなかったので、構成を変更してクワドに変えてくるのではと一瞬ジャパン・オープンが頭をよぎった。しかし、ここは冷静に対処し、3ルッツに3トゥループをつけてリカバーしてきた。トリプルジャンプは非常に軽々と跳びさすがの美しさ。3Lz+3T13.3点(11.11+GOE2.19)。レベル4のフライング・シットスピン3.73点(FSSp4 3.00+GOE0.73)、非常にエネルギッシュで楽しいステップ・シークエンス4.86点(StSq3 3.30+GOE1.56)。9人中6人のジャッジがGOE+5。最後はレベル4の足換えのコンビネーションスピン4.50点(CCoSp4 3.50+GOE1.0)。最後は笑顔でのフィニッシュ。

 

ショートプログラムは90.58点(TES45.94点+PCS44.64点)。2位に8.94差をつけ首位発進。TES(技術点)は昨季までSPに4ルッツと4フリップを入れていたネイサンの得点からは低いものとなったが、PCS(プログラム・コンポーネンツ:演技構成点)は「技の繋ぎ」も8.82と高評価。「構成」と「音楽の解釈」では9点台をたたき出し、初戦からPCS44.64点とまずまずの評価となった。

終わってキスクラではネイサンもラファも一様にほっとした穏やかな表情が印象的だった。

パフォーマンスには満足しています

演技終了後のインタビューでは、

「いいスタートを切ることができた。フリーは完璧な演技をしたいけどジャンプは特に重要なのでしっかり決めたい」(テレビ朝日より)、「今日のSPは僕にとってシーズン開幕としては良かったと思う。テクニカルでは最高のものではなかったが、演技は良かった。観客は素晴らしい」「明らかに、ジャンプは僕が望んでいるものではありませんが、シーズンの序盤だし、進化するには十分な時間があります」「クワドはとても大切、今後進化し続けられるよう頑張っていきます」「練習では、クワドを跳ぶのが一番楽しい。そしてクワドを試合で披露したいんです」。(プレカンより)

 

すでに日本のアイスショー(ザ・アイスやカーニバル・オン・アイス)で何度も滑っておりお馴染みだが、明るい照明の元でもまるでショーナンバーのような楽しいプログラムだ。顔の表情や観客とのコンタクトも楽しく、音楽との調和が素晴らしくまるでショーを見ているような感覚になる。とても粋で可愛らしいプログラム。またネイサンの新たな面を引き出してくれた(Vol.2へ続く)

 

注)写真に関してはNCJPの写真とともに、USスケート連盟やISUで公式写真を撮られているアメリカ人のカメラマンMs.Robin Ritossさんにご許可頂いて一部使用しております。